令和6年度
最優秀論文賞・大崎賞
「γ-Cyclodextrin-Assisted Selective Removal of Zr from Sr-90 and Zr Mixtures for Sr-90 Quantification by Triple-quadrupole Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry」
Radiation Safety Management, Vol. 23, 1-6, 2024
Shogo Higaki The University of Tokyo
従来,Sr-90の定量は,共存するY-90を除去した後に2週間程度の時間をかけてSr-90とY-90との放射平衡を成立させた後,改めてY-90を分離してその放射能を求めることにより,Sr-90の放射能を決定する方法が採用されてきた.しなしながら,福島第一原子力発電所事故を契機として,少量のサンプル中のSr-90を放射線計測によらず,かつ迅速に定量する方法としてICP-MSによる分析法が開発されるようになった.同法の適用には,妨害となる同重体のZr-90の分離が欠かせないが,原子炉廃止措置にかかるサンプルなどにはSr-90に比べてZrがはるかに多いことが予測された.そこで,多量のZrを安価で容易に分離する方法としてシクロデキストリンを用いる方法を,混合金属溶液からの分離に適用することを考え,その理論的根拠を示すとともに,実用可能性を実験的に証明した点,本学会として高く評価できるものであり,最優秀論文賞・大崎賞を授与するに値するものである.
技術賞
「Measurement of Gaseous Radioactivity Concentration of Short-Lived Nuclides Produced by Air Activation in the Spallation Neutron Source Facility of J-PARC」
Radiation Safety Management, Vol. 23, 7-15, 2024
Koichi Sakashita Japan Atomic Energy Agency
Co-author: Yuto Arakawa, Koichi Masuyama, Koichi Sato, Kazunari Seki, Yoshimi Kasugai, Tetsuro Ishii
J-PARCでは,大強度の陽子ビームを用いて大量の中性子などの二次粒子を発生させている.その際,陽子ビームは炭素ターゲットを通過し,ターゲットステーション中央に位置する水銀ターゲットに到達するが,その後方にホットセルが位置している.ホットセル内では中性子との核反応により,11C,13N,15O,41Arといった気体状の短寿命核種が生成される.そのホットセル内の空気は常時排気されていることから,その空気中の放射性核種の濃度について,測定によってそれぞれの放射能の寄与を分離して把握することは重要である.諸外国においても核種別の定量が試みられてきたが,β+壊変する核種がそれぞれに固有のエネルギーのγ線を放出しないため,個々の核種の寄与を見積もることはできなかった.そこで,測定された計数率の時間変化に,生成核の半減期に依存する多成分関数を当てはめることにより,それぞれの核種に寄与を分離して濃度決定をした点,本学会として高く評価できるものであり,技術賞を授与するに値するものである.
研究奨励賞
「X線透視下での気管支鏡検査における医師の水晶体被ばくの評価」
日本放射線安全管理学会誌, 23巻2号, 62-69, 2024
高平 咲希 東北大学
共著者: 芳賀 喜裕, 曽田 真宏,阿部美津也, 加賀 勇治, 木村雄一郎, 稲葉 洋平, 千田 浩一
気管支鏡検査におけるX線透視の使用は診断の精度や治療成績の向上に役立つ一方で,それに従事する医療従事者の被曝,特に水晶体の被曝が懸念される.したがって,その被曝線量を評価することは重要である.本論文では,X線透視下で気管支鏡検査の手技を行う医師15名について,1年間にわたって水晶体被曝線量を測定し,その線量が20 mSv/年を超えた医師が1名いた他,15名の平均値が9.0 mSvで,中央値が8.3 mSvであったことを報告している.本論文では,単に水晶体の被曝線量の測定を行ったのみではなく,医師が担当した手技件数,透視時間,空気カーマ,撮影回数,患者のBMIと水晶体の被曝線量との間の相関も検討し,これらが水晶体の被曝線量増加の危険因子であることを示すとともに,水晶体被曝線量の予測に使える可能性を示した点,本学会として高く評価できるものであり,研究奨励賞を授与するに値するものである.
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