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日本放射線安全管理学会設立趣意書



 放射線やラジオアイソトープ(RI)は研究・教育・産業・医療等の諸分野において、 基礎から応用に至るまで幅広く利用されております。 放射線を用いることによって、他の手段ではなしえない多大な成果が各分野で挙げられて来ました。 放射線やR Iの様々な分野における積極的な利用は、 放射線の安全管理に関する研究成果に基づいた適切な放射線安全管理の実践によってはじめて成り立つものです。 その意味で放射線安全管理は今日の文明社会を維持発展させて行く上で、 必要不可欠な社会的インフラストラクチュアの一部を成していると言っても過言ではないでしょう。
 放射線やRIの利用は広範囲の学術分野に及んでいることから、放射線安全管理に係わる研究成果は、 各々の専門領域に立脚して設立された学会で分散して発表されて来ました。 そのような学会には日本保健物理学会、日本原子力学会(保健物理・環境部会)、 日本アイソトープ協会(主任者部会)、日本医学放射線学会、日本歯科放射線学会、日本獣医学会、 日本核医学会、日本核医学技術学会、日本薬学会、日本医学物理学会、プラズマ・核融合学会、電気学会、 日本放射線技術学会、応用物理学会(放射線分科会)、日本放射線化学会、 日本放射化学会、日本放射線影響学会、その他の学会があります。 このように、これまで放射線安全管理の現場で遭遇する実務に直結した学術的課題を、 横断的に議論する共通の場が必ずしも備わっていませんでした。 このような事情もあって、放射線安全管理学は未だ体系的な学問として確立していないのが現状です。
 放射線安全管理学は密封RI、非密封RI、X線発生装置、加速器、原子炉、核融合実験装置、核燃料、 その他の放射線源を対象に放射線安全管理システムの設計、構築、運用に必要とされる諸々の課題を取扱います。 具体的な研究課題は、 防護理論、放射線計測、環境放射能、環境放射線、被曝線量評価、被曝の低減、 汚染・被曝事例と対策、遮蔽設計、排気・排水管理、放射線源管理、入退管理、飛散率・透過率、汚染検査、 廃棄物処理、クリアランス等に関するものから、法理論、教育方法、リスクコミュニケーション、医療被曝、 在宅医療、危機管理、データ処理、画像解析、ソフトウエア、IT技術等々に至るまで多岐に渡っています。
 このような状況にあって、分散している研究者が一同に会し、 研究成果発表や情報交換が出来る場を提供することによって、この分野の一層の活性化を図り、 放射線安全管理実務の学術的基礎を考究する放射線安全管理学を確立することが強く望まれるところであります。 そのためには、求心力となる専門の学会が必要であると考えます。
 そこで、この度、志を同じくする者が集まって学会設立準備委員会を組織し、 この分野に関わっている研究職、教育職、学生、技術職、技能職、事務職、行政職の方々、 さらには放射線安全管理に関心をお持ちの方々に広く声をおかけして日本放射線安全管理学会を設立することとしました。
 本学会では、会員の研究発表・情報交換の場として学術大会、学術講演会・研究会等の開催、 ならびに邦文および英文の学術誌を発行する予定です。これによって、この分野の研究の活性化を図り、 特に英文誌を通して本学会がこの分野における国際交流の中核となることを目指します。 また、このような学術活動を通して若手研究者の育成、放射線安全管理の質的向上、 ならびに行政施策の高度化への寄与を図ることによって、社会的貢献を果たします。

平成13年9月